3つのうた より「はじまりのうた」/新井秀昇
2020年のある日、新井の人生にとってかけがえのない大切な出来事があった。その日から目の前の世界が変わり、つらいことや悲しいことがあろうともいつも未来に希望を見出せるようになった。その喜びを得た日、自然と沸き起こってきた音楽が「はじまりのうた」。
“Song of the New Day” from 3 songs/ Hidenori Arai
One day in 2020, a treasured event happened to me. After that, the world before my eyes was changed and I always could have hope for the future, even if feeling sad or having problems. On the day which brought me such happiness, this song suddenly came from my heart.
華麗なる変奏曲/A. アダン
Bravura Variations / Adolphe Charles Adam
2曲目は1800年代前半に活躍したフランスの作曲家アドルフ・アダンによる「華麗なる変奏曲」。おなじみ~きらきら星~のテーマによるこの変奏曲は、作曲者自身のオペラ「闘牛士」から抜き取られたもので、コロラトゥーラ・ソプラノのための主要レパートリー。
2nd アルバムに収録した『「歌の翼に」による変奏曲』もそうであるが、新井はここ数年、こういった軽く温かで明るいテイストの変奏曲が大好きのよう。金管楽器奏者ということもあり元よりシンプルな変奏曲に馴染みがあるが、金管の特性を活かしたよくあるショーピースではなく、よりクラシカルで甘さや麗しさ、奥深さを含んだものを求めている。
この変奏曲はなんといってもまずテーマ。モーツァルトもあの有名な変奏曲を書いているし、きらきら星はこれまで世界中で愛されてきた名旋律。
それに対し技巧的なフレーズが紡がれているのみならず、そこには絶妙なハーモニーの味付けがあったり、テーマのシンプルさが尊重された非和声音が使われたりしている。
華麗だけれど華美過ぎず、とても落ち着くバランスなのです。
これから「ユーフォニアム・アラカルト」のコンサートシリーズは回を重ねていく予定なのであるが、その度にこういった作品を見つけていけたらと思っているのです。
パーティー・ピース/P. スパーク
Party Piece / Philip Sparke
イギリスのフィリップ・スパークは我々ユーフォニアム奏者にとってなくてはならない作曲家。パントマイムをはじめとする数ある作品の中から、今回はこのおしゃれな「パーティー・ピース」を選曲した。
元来はブラスバンドとユーフォニアムのために書かれたものであるが、当アルバムに収録のピアノリダクションではガラッと変わった風合いを楽しむことが出来る。
のどかな昼下がり、お庭のテーブルに広げられたアミューズやプチフール、ワインとともに家族や友人と楽しむささやかなパーティー。温かで麗しく軽やか、時にロマンチックなこの曲のフレーズたちは、そんな光景を思わせる。
1986年に作曲されて以来、世界中のユーフォニアム奏者たちに愛奏されている作品であるが、実は新井が取り上げるのはこのアルバム収録少し前のコンサートが初めて。曲目を思案していたころに何人かの生徒たちが立て続けにパーティー・ピースを持ってきてくれて、レッスンを重ねるうちにすっかりこの曲に魅了されてしまったのです。素敵な演奏を聴かせてくれた生徒たちに、心から感謝。
ソナタ第2番 イ短調 Op.26/J. ボワモルティエ
Sonata No.2 in A Minor Op.26 / Joseph Bodin de Boismortier
続いては時代が遡って、フランスバロックを代表する作曲家ジョセフ・ボダン・ド・ボワモルティエによるソナタ。このOp.26はチェロまたはファゴットと通奏低音のための5曲からなるソナタ集の第2曲目で、急緩緩急の4楽章構成である。
情熱的な第1楽章ならびにオーソドックスなアダージョの第3楽章の後にはそれぞれ第2楽章アルマンド、第4楽章ジーグと舞曲が配置された、バロック・ソナタにおける室内ソナタである。
メロディアスで親しみやすく、大変優れた作品であると思うのだが、何故か本家のチェロやファゴットにも殆ど録音を見つけることが出来ない…。
なお、今回使用している楽譜はMusica Rara出版、ロナルド・タイリー氏の編纂によるものであるが、ピアノ右手パートがシンプルながらも美しく絶妙で、楽譜として大変価値のあるものである。
スペインのフォリアによる変奏曲/M. マレ(新井秀昇編)
Les Folies d'Espagne / Marin Marais, arr. Hidenori Arai
マラン・マレは当時のヴィオラ・ダ・ガンバの名手であり、やはりボワモルティエ同様フランスバロックを代表する作曲家でもあった。
ガンバのために数多くの名曲を残しているが、中でも取り分け有名なのがヴィオール曲集第2巻に収録されているこの「スペインのフォリアによる変奏曲」。バロックアンサンブルと共にガンバで演奏されることはもちろん、無伴奏フルートで演奏されることも多い。
序文にもあるが、高校生時代の新井が大きく影響を受け愛聴していたフランスを代表するフルーティスト、ジャン=ピエール・ランパルの小品集にこの作品が収録されており、その思い出と共に、今回ユーフォニアム用に編纂し録音をした。本来主題と31の変奏からなる作品であるが、その中から主題と14の変奏を選んでいる。
シンプルな構成ながらも、ニュアンスやキャラクターに富み、非常にドラマチックな作品である。
アヴェ・マリア/A. ピアソラ
Ave Maria / Astor Piazzolla
タンゴの革命児アストル・ピアソラによる「アヴェ・マリア」にはイタリア語の歌詞がついた歌曲の版と、映画「エンリコ4世」のために「Tanti Anni Prima(昔々)」というタイトルで書かれたオーボエとピアノによる版の2つがある。当アルバムでは後者のオーボエとピアノのために書かれたものをお送りする。
説明はない。
言葉にできない美しさ。
ハート・イン・ハート/I. ボサンコ
Glorious Liberation “Heart in Heart” / Ivor Bosanko
救世軍の作曲家アイヴォー・ボサンコによるファンタジー。元来はユーフォニアムとブリティッシュ・スタイルのブラスバンドのために書かれたもの。
温かなテーマに華麗なフレーズの数々、そしてたくさんのキャラクターが詰まったこの曲は、ユーフォニアムの魅力を十分に伝えてくれる作品の一つ。
中学生の時に買ってもらったスティーブン・ミード氏のアルバム「World of the Euphonium vol. 1」にこの曲が収録されていた。当時はまだあまり多くのユーフォニアムのCDが手に入らない時代でこのCDも相当に聞き込んだのであるが、中でも「ハート・イン・ハート」はユーフォニアムを始めたばかりの右も左もわからない少年の心をぐっとつかんだ。その後長い間記憶の奥に眠っていたのだが、数年前に楽譜屋さんでこの曲を手に取った瞬間、あの時の喜びを思い出した。そうして自然とアラカルトメニューに加わったのです。
吟遊詩人の歌/A. グラズノフ
Chant du Ménestrel / Aleksandr Konstantinovich Glazunov
ロシアの作曲家アレクサンドル・コンスタンティノヴィチ・グラズノフ(1865-1936)、民族主義を基調としながらロシア・ロマン主義を融和させた作風がその特徴である。
1900年にチェロと管弦楽のために書かれたこの小品は、哀愁や郷愁を思わせる終始美しい旋律。切なく、時に遠い昔の愛に懐かしみ、そして望郷の念とともにまた歩き出す。そのようなことを思い起こさせてくれる浪漫譚。
チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 Op. 58より 第1楽章/F. メンデルスゾーン
Allegro assai vivace from Cello Sonata No. 2 in D Major Op. 58 / Felix Mendelssohn Bartholdy
フェリックス・メンデルスゾーン(1809 - 1847)の第2番のチェロソナタは1843年に作曲され、翌年イギリスにてイタリアのチェロ奏者で親友のアルフレード・カルロ・ピアッティと共に初演された。
今回収録している第1楽章 Allegro assai vivaceは6/8のエネルギー溢れる伸びやかな第一主題と時に優雅に時に抒情的に語りかけるような第二主題、そして生命のほとばしりのような16分音符の音群の連続が印象的で、冒頭から最後まで息つく間もなく一気に駆け抜けていくような音楽であるが、それらがソナタ形式の中で整然とまとまり楽章全体としての大きな動きの美しさを味わうことができるものである。
パナシェ/R. デューハースト
Panache / Robin Dewhurst
イギリスの作曲家でピアニストのデューハーストによる優しくポップで軽やかな小品。ピアノ版の他にブラスバンド版と吹奏楽版がある。
ところでパナシェとはビールとレモンスカッシュを1:1で混ぜて作るカクテルのことだそう。さて、お次は何を召し上がりますか?
🍽 🍽 🍽 🍽 🍽 You can see about Hidenori's 3rd album "Euphonium à la carte" at following link; 3rd アルバム「ユーフォニアム・アラカルト」についての詳細はこちらから
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